1st CD「ルートヴィヒの肖像」FFW-002より

「前狂言」 作詞作曲HIRON

道化の口上:

「さあさ、お待ちかね、皆様。ここにただ今お見せ致しまするは、ある、異常性格者の…いえいえ、(異常なのはひょっとしたら皆様のほうかもしれませんが、)そんなある人間の『愚痴』?とでも申しましょうか。それを退屈ばかりしていらっしゃる皆様にお目にかけようという、まあいかにお暇とはいえ、全くもって申し上げにくい試みでございます。(もちろん彼にとっては『愚痴』のつもりじゃないんでしょうが…そんなことはどうでもいいこと。)

 実際、よそ様にかかってしまったら、悲劇も喜劇もあったもんじゃありません。昔、ふらんすのあるお偉い方が、荘厳と滑稽はわずかに紙一重、などとおっしゃいましたが、皆様、この言葉は真理をついていると思われませんか?同じことがここでも言えるようでございますよ。

 いかようにもお楽しみ下さいませ。お慰みに音楽など、つけてあります。音楽なんぞ、皆様にとりまして何の役にも立たない代物でございますが、気持ちばかりの小曲をご用意いたしました。 感覚の鋭い皆様のことでございますから、わたくしどものつまらぬ意図など、すぐにお見破りになってしまうことでございましょう。(もっともこれは反語とか申します修辞法でありますが…)

 あっ、申し遅れました。わたくし、前述の異常性格者とは一切かかわりのない、ただの道化でございます」

 

OVERTURE」 作曲HIRON

※インストゥルメンタル

飛ばない翼 作詞作曲HIRON

幾億万の嘆きは過去に失せ 幾億万の欺きも隠れて
僕らの情熱は嘘にたすけられ 飛ぶことのない見事な翼を備えていくよ

誰が僕を知るや?
誰が君を知るや?
声なき声が空に満ち満ちて
あなたはひとりきり 知る由もない
この世の残酷にさらされてゆくのになぜか笑うよ

ああ見たこともない夢路の果てにあるものを求めて
ただ飛ばぬ翼に十重二十重の飾りをつけてなくしていくのは
僕らの描いた夢だった
きれいな夢だった

 

人生は一行のボードレールにしかない 作詞作曲HIRON

「随分と遠回りしたものだ、気がつくまでに。感情の高まりは諸刃の短剣。美しさに惹かれて手にとってみれば、我が手を引き裂く無粋な刃が潜んでいる。俺は何をもくだらないと言ってのけるだけの無慈悲な法を発見した。残酷な神よ。いっそ我に絶望こそ与えよ。諸刃の剣ゆえに、人は絶望さえ容易にはできぬ。心の奥底に希望の片鱗を残したまま、我に死ねとおっしゃるか!所詮この世は行き先の知れぬお遊戯だ。おのれのくたばる最期の瞬間まで、大芝居をうってやらあ!」

 

ルートヴィヒの肖像 作詞作曲HIRON

「あなたはかくも孤独にありながら、いかに偉大であったことか。これが絹糸を震わす微風にも感じる弱さを持ちながら,人間の持ちうる全ての精神力を駆使した強さを刻みつけた顔だ。俺にはできぬ。俺にはできぬ。見てくれ、この抜け面を!この抜け面は、些細な緊張の持続にも情けない泣き顔に変わろうとするのだ。偉大なるルートヴィヒよ。あなたはいかに生き抜いてきたのだ?この物憂い世の中を」

 

月光」 作詞作曲HIRON

独りおもう  物憂く静かな月明かりのもとで
すべてはむなしくたよりない夢のように
何をおもう  いつしか棄ててきた僕の情に

何を求める?毒されて麻痺した人のこころ

よわきを知らぬ鈍いこころも
つよきを知らぬ怠惰なこころも
寂しくて

 

告白 作詞作曲HIRON

貴様は己の鏡を見ているか
貴様は己の姿を見ているか
貴様は裸の王を知っているか
叡智 情念 自意識の煩わしさを背負った

いつか落ち込んでいく 独りよがりの道化舞台に
愛すことなく愛されもせず
苦し紛れの逃避劇
時こそ今は 告白の

 

空漠とわたし 作詞作曲HIRON

叙情詩の落日を迎えて きれいな星を夜空に宿せるか
わかりあえずに愛憎の氾濫は
いつか疲れ切った僕たちの夢を流した

あなたのいたこの場所は二度と埋まることのないかなしい空席になって
僕の傍らに在り続けるだろう
あなたと争った日々 憎しみさえ純真に壊れていったあなたが
空漠の広がる僕の心にも痛くて

あなたの残した痕は二度と消えることのないかなしい傷跡になって
僕の思い出に在り続けるだろう
弱すぎたこころに装いは重すぎて壊れていったあなたが
空漠の広がる僕の心にも痛くて

 

TELL ME TRUTH 作詞作曲HIRON

引き返す道さえ見失ってしまった
俺の手の灯火は消えてしまいそうなのに
愛は痛いくらいに憎むことを教える
疲労した心には些細な刺さえ痛いけれど

TELL ME TRUTH 真の居場所を俺に教えてくれよ
TELL ME TRUTH 無駄な問答繰り返すたびに
わいては消えていく愚かしさだけが俺を包んで

死のうと思い立ち死ねなかったそのあとは
堕ちてゆくことだけが救いのように思えた
嘘の上塗りだけが生きることの答えさ
悲劇は喜劇の嘘 我が身の愚かしい性ゆえの

TELL ME TRUTH 本当のこと俺にわからせてくれよ
TELL ME TRUTH 俺は愛さなかったと 愛を知らぬと
知らないことも知らずに すべてを知ったつもりでいたと

愛情が自己愛の域から一歩でも出ることはあるのだろうか
愛情を自己愛の域から一歩でも出すことができるだろうか

何よりも本当の愛が欲しくて嘘を壊し続ける
嘘でしか語れない真実もあるのに見えないものがこわくて
何よりも本当の愛が欲しくて嘘を重ね続ける
嘘でしか開けない心の不思議に何を求めればいい
愚かな俺のさだめに TELL ME TRUTH

 

2nd CD「霞」FFW-004より

」 作詞作曲HIRON

(男声、女声

見透かされることを恐れてありふれた道化を演じあい
可哀想なあなたの表情に押しつぶされてゆく
 夢は時の中に色あせて大人になっていくのかしら
 いつか覚えた...辛いときにも涙こらえて何気なくふるまうことを


人の性を知りすぎたあなたのこころにかげる倦怠の兆しを
苦い記憶の痛みとともに連れ去ってやることができたらいいのに 遠くへ

 幼き日々を夢に描き出せばいつか広がる霞の世界に憧れを抱くわたしの面影
思い出にしたくない 清らかなあなたを

こんなにも愛しいあなたが汚されてゆく 霞の中で
こんなにも愛しいあなたが傷ついてゆく 霞の中で

 過ぎ去った日々を胸に映し出せばいつか広がる霞の世界を追いかけていくわたしの面影
誰もが幸せになれたらいいのに

こんなにも愛しいあなたが汚されてゆく 霞の中で
こんなにも愛しいあなたが傷ついてゆく 霞の中で
迷い子のようにあなたがさまよっている 霞の中を
届きそうなのに届かないあなたの心は 霞の中に

 見透かされることがこわくて何気ない空疎なことばだけど
 声にならない真実は胸のなかそっとしまってあるの

あなたの傷口がわたしの最後の思い出ならば
かなしい因果の忘却とやすらぎをもたらしてあげたい

人の性を知りすぎて何も見えないあなたの痛ましいこころに
ふるえるほどの愛のうたを聴かせてあげたい
この胸の内を旋律として 霞の中のあなたのこころへ

 

IN THE MIST 作詞作曲HIRON

いくすじもの足跡が霞の中を続くのだ

クリストの歩いた認識以前にも

幾億万のたましいがこの世の光のただなかに

ときにはうたをうたいつつ

 

虚像の神 作詞作曲HIRON

(男声、女声

古ぼけた宝箱の中は 良心の麻痺した かびの生えた道徳教典
核心に迫りくる憂鬱 愛していたかった あなたが創り出した甘美なうたを

見渡せば娑婆苦にゆがむ景色 汚れのない夢を! 明日のない僕らの世界に
誰もが天才舞台役者 何もしらずにいた 微細に綴られていくシナリオ

 梢から枯れていく立木のように
痛みは消えることもなく
 手足のほうから先におかされて みじめな姿に凍りつい

追いかけて追いかけて手に取った宝箱
 青い疲労があなたの声を静かに奪っていくわ
押しつけられた台詞は捨てて降りてしまおうこの舞台から
 あなたのことを愛した数だけ真綿で首をしめつけてあげる

 演じきれないこころの中を懸命に歩いていく
頼りない夢をみている
 あなたの創った虚像の神が声をもてたら

追いかけて追いかけて手に取った宝箱
 青い疲労があなたの声を静かに奪っていくわ
押しつけられた台詞は捨てて降りてしまおうこの舞台から
 あなたのために感じた痛みも知ることさえないままに
苦しくて哀しくて 救いのないこんな舞台に
 未練がましくすがりついているあなたの影が見えるわ
過ぎていけ過ぎていけ何もかもここを過ぎていけ
 
大切なものたくさんあるほどあなたの人生は長くないわ

 

いまはただ静かにあなたのもとに 作詞作曲HIRON

(女声ソロ)

いまはただ静かにあなたのもとに
かたくなのこころにやすらぎを
もえつきたあとにはつよくみえたあなたのよわいこころだけが残って
いまはただ静かにあなたのもとに

 

その他(音源未発表曲)

「浄められた夜」 作詞作曲HIRON

狂いかけた僕にあなたがつぶやいている 死んだっていいよう、もう死んだっていいようと
僕のすべてが嘘にみえたか 僕のすべては嘘であったか

誰よりみじめな僕にあなたがつぶやいている 死んだっていいよう、もう死んだっていいようと
僕のすべてが嘘にみえたか 僕のすべては嘘であったか

なみだで描いた この道を
あなたはきっと分からない わたしのつたなさも
このかなしみも

僕を置いてどこに行くの どこに行くの どこに行くの 僕を置いてどこに行くの
君はひとり僕もひとり 君はひとり僕もひとり 苦しい どこにいても
ここを過ぎても修羅道は続くよ

夢からさめただけ 人は人以外になれやしない
夢からさめただけ かなわない夢からさめただけ


進むも戻るもしるべなき道程  嘆くも笑うも紙一重の僕たちよ…
さばかりに生きるや? さばかりに死ぬるや? 愛のため?欲望のため? 愚かしいほど
すべてが見えない


湿った野原の黒い土、短い草の上を 夜風は吹いて、
死んだっていいよう、死んだっていいよう、と
うつくしい魂はなくのであった


許そう あなたの過ちを許そう  僕の魂はあなたのあたえてくれたもの
許そう 僕を救わぬことを許そう あなたは僕の位置まで降りてきた

きれいなものがまだ分かることができたらいいね
かって盲目にしがみついた 生のままの弱さよ
伝えたい だけど伝えるわけにはいかない
わたしの中の真実も そして偽りも (この愛も


祈ろう 愛はどうして あなたと僕の流した涙が 苦しみを求めるの
浄められた雨になって僕らの上に降り注ぐように
祈ろう 心はいつか 愛憎の巻き起こす悲劇が 闇夜をさまよう               
二度とふたたびあなたの上におちないように

さようなら 愛もいつかは消えるわ すべてのことは夢のように幻のように

僕のこの手にいま少しの力があるのなら  僕のこの胸にいま少しの強さがあるのなら
みそらは高く吹く風はこまやかに 祈ることしかわたしには すべがなかった…
何が見える? 懊悩の果てに

 

「冷えた心に闘争を」 作詞作曲HIRON

今はもう駄目かもしれない 空虚な心 駆け抜けていく刹那の予感
何も伝える言葉がない 悲しいくらい渦巻いている恥じらいにまみれ
時には天使のように 時には悪魔のように
啓き示したものがこんなにも愛しく思える

今はもう駄目かもしれない こんな眼には 何もかもが馬鹿らしく見えて
何も伝える言葉がない 悲しいくらい俺を押し戻す恥じらいの中
時には夢のように 時には悪夢のように
啓き示したものをこんなにも焦がれ求めている

暗き心にやさしさを!
いつかなさけみつるうたを愛せるように
冷えた心に闘争を!
そして大切なものを愛せるように

時には迷子のように 時にはピエロのように
疎ましかったものがこんなにも愛しく思える

いつかあなたを思い出す
愛は天秤仕掛けの幸福だから
いつもあなたを思い出す
いつか知らず知らぬうちに使い果たすの?

もういちどだけ夢を見せて 静かな夜は答えてはくれない
ああさみしい夜 空虚な夜 わたしの心に更けていく夜


暗き心にやさしさを!
いつかなさけみつるうたを愛せるように
冷えた心に闘争を!
そして大切なものを愛せるように